2021年08月06日

与那覇恵子さん、お気を確かに!


 世の中には本当に困った人たちがいるものである。手の付けられない人たちがいるものである。

 与那覇恵子という投書マニアの女性については、前にも言及したことがある(「日本語になっていない琉球新報の論壇記事」)が、この人はその後も懲りずに呆れ返るようなことを新聞に投書し続けている。

 たとえば、8月2日付の琉球新報紙に掲載された「対立あおる日本政府/悪化する日中関係」という投稿文を読んでみると、この人が、客観的な事実関係などまるでお構いなしに、ほとんど妄想に近い一方的な思い込みだけで日本政府を批判していることに、呆れるのを通り越してほとほとウンザリさせられる。

 与那覇氏がどんなことを書いているのかというと、「中国脅威を作り、あおり続けるのは日本政府という事実」を知らなければ、沖縄県民は自らの命を守ることもできなくなるのだそうである。

 それはなぜか。尖閣諸島の国有化後、安倍・菅政権は、中国に対するバッシングを強め、日中関係の険悪化に拍車をかけている。特に尖閣諸島をめぐっては、政府は、中国の海警局の動向を誇大に発信し、中国脅威論を煽り立ててている。このままでは、日中間の戦争も避けられなくなるだろうが、そうなれば、沖縄は戦争の前線基地にされて、再び犠牲を強いられることになるだろう、というのだ。

 与那覇氏はさらに続けて、尖閣に対する中国脅威論の実態は、石垣市議会議員や右翼団体が所有する漁船が、尖閣海域で中国海警局を挑発した結果、中国側が対応せざるを得ないように仕向けたものにほかならない、中国の脅威が盛んに喧伝されてきたが、日本の漁船が中国側に拿捕された事案が1件もないという事実は、実際に危機を煽っているのは日本側だということを示すものだ、というのである。

 どうやら与那覇氏は、いわゆる中国脅威論は虚構だと言い張りたいようで、その具体的な根拠として、尖閣近海での中国の脅威が強調されているが、実際には何も起きていないではないか、日本の漁船は一度も拿捕されていないではないか、といいたいらしい。

 これは現実を全く見ていない誤った認識である。

 この人は愚かにも、何も起きていないことと、何も起きないようにしていることを混同しているのである。

 与那覇氏のいうとおり、たしかに日本の漁船が中国公船に拿捕されるという事態は「起きていない」。

 しかしそれは、日本側が何も手を打たなくても、自然にそうなっているという訳ではない。現実はどうなっているのかというと、海上保安庁を中心とする関係機関が警戒・監視を続けているからこそ、つまりは、「何も起きないようにしている」からこそ、日本漁船の拿捕という事態は「起きていない」のである。

 しかも、漁船拿捕という事態は起きていないものの、現状は決して楽観視できるようなものではない。数年前から、尖閣近海では、中国海警局の艦船が日本の漁船に接近する動きを頻繁に見せるようになっており、その度に、海保の艦艇が間に割って入る形でトラブルを未然に防いでいるというのが実情である。

 それなのに、与那覇氏の手にかかると、このような現実もハナから無視されて、「〔中国脅威論には〕事実や根拠がない」とか、「中国脅威を作り、あおり続けるのは日本政府」などという話になってしまうのである。本当にどうしようもない人である。

 また、さらに読み進めていくと、何も起きていないことと何も起きないようにすることの区別がつかない与那覇氏は、法案が可決されたばかりの土地利用規制法についても、「米軍や自衛隊基地周辺の中国人の土地買い上げがないにもかかわらず、(略)安全保障上重要な土地を買い上げる外国人の脅威を防ぐとして法を可決した」のは、「事実や根拠がないにもかかわらずあるがごとく見せる」政府のいつものやり口だ、本当の狙いは沖縄県民を取り締まろうとしているのだと、まるで見当違いな批判を唱えている。

 先程の尖閣をめぐる現状認識といい、この土地利用規制法に対する言いがかりといい、この人の思考回路は一体どうなっているのだろうか。

 土地利用規制法の立法目的は、問題が起きてから対応するのでは手遅れになるから、あらかじめ予防的に一部の土地取引を規制しようというものである。それなのに、この人は、バカのひとつ覚えのように、そんなことは実際には起きていないのに、なぜ、そんなことをしなければならないのか、と呪文のように繰り返すばかりなのだ。どうしてこれほど話がかみ合わないのか、いくら考えてみても、私には理由がさっぱり分からない。もしかすると、この人のアタマの中には、予防という概念がはじめから無いのだろうか。

 与那覇氏の論法にしたがうと、犯罪が起きていないうちは警察はいらないし、火事が起きていないうちは消防も要らないことになる。ガードマンも火災報知器も不要ということになる。こういうものは、どれもこれも、犯罪が起きてから、火事が起きてから用意すればよいということになってしまう。

 あまりにもバカバカしい話である。

 しかし、与那覇氏の文章を読んでいて心底ウンザリさせられるのは、この人が、かなりレベルの低い陰謀史観に骨の髄までとらわれてしまっているらしいことだ。

 与那覇氏はこう書いている。

「安倍・菅政権で目に付き始めたのは、(略)米国代理の日中戦争前線基地とするための列島要塞化だ」

「島中で激しさを増す米軍機飛行、米国政策の代理戦争準備に自公政権が動く。加担する沖縄の政治家は自身の命をどう守るのか? 日米は沖縄の限定戦争で利を得たい」

 論理の飛躍がやたらと目に付く悪文だが、要するに、この人にいわせると、米国政府は戦争が利益になると考えていて、中国との戦争をしたがっているというのだ。自公政権も沖縄の保守系政治家も、その米国の走狗となり果てて、戦場を沖縄だけに限定する日中戦争の勃発を目論んでいるというのだ。

 これは本当に驚くべき見解である。

 一体、米政府の誰が戦争を望んでいるのか。大統領か、国防総省か、それとも議会か。「日米は沖縄の限定戦争で利を得たい」というが、そもそも、戦争で得られる利とは具体的に何を指しているのか。イラクやアフガンから手を引いたばかりの米国が、それ以上の人的犠牲を覚悟しなければならない中国との戦争に本当に踏み切れるのか。日米両政府は、沖縄だけを戦場とする限定戦争を画策しているというが、実際の戦争をそんなに都合よくコントロールできるものなのか。あるいは、日米両政府が限定戦争の枠内で対中戦争を戦えると想定しているという確たる情報でもあるのか。

 次から次へと疑問点が湧いてくるが、これらの疑問を与那覇氏にいくらぶつけてみても、おそらくはムダであろう。この手の陰謀論にはまってしまう人々というのは、情報の確実性や根拠などということには一向に頓着しないと相場が決まっているからだ。与那覇氏のような人には、世界はこういう風にしか見えないのである。

 本当に困った人である。手の付けられない人である。


与那覇恵子さん、お気を確かに!





Posted by HM at 13:58│Comments(0)
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