2018年11月20日

《元裁判官》仲宗根勇氏の正体


 時折、医師免許を持っていないのに、医師であるかのように装って、診療行為を行っていたニセ医者が医師法違反容疑で逮捕された、というニュースが流れることがある。

 そうした者のなかにはなかなか腕も良くて、患者の評判も上々だったなどというケースもあるが、悪質なものになると、注射も満足に出来なかったり、患者の病状を悪化させたというケースもあって、そういうニセ医者に当たった患者は本当にお気の毒である。

 ところで最近、法律家の資格を持っていないのに法律家であるかのように装う、ニセ医者ならぬニセ法律家が、沖縄県内を徘徊しているのをちらほらと見かける。そして、誤った法律論をふりかざし、あたら県民世論を間違った方向にミスリードしているのだから、まことに始末が悪い。

 その代表格ともいうべき人物が、「うるま市具志川九条の会」の代表を務め、琉球新報、沖縄タイムス両紙にもしばしば登場している仲宗根勇氏である。

 仲宗根氏がマスコミに登場する際、必ずといってもよいほどに付いて回るのが、「元裁判官」という肩書きだ。そしてこの肩書きが、仲宗根氏の様々な言動を強く権威づけている。

 しかし、驚かれるかもしれないが、実はこの人は法曹資格を有した法律家ではない。

 どういうことかいうと、一口に「裁判官」といってもその内実はいろいろあって、仲宗根氏は簡易裁判所の判事を務めてきた人なのである。

 簡易裁判所は、最高裁、高裁、地裁といった各級の裁判所のなかでも最も単純な訴訟を受け持つところで、ほかの裁判所とは判事の登用方法が大きく異なっている。具体的にいうと、簡裁の判事は、実務経験の豊富な裁判所書記官のなかから部内の選抜試験を経て、判事に任用されるケースが大半を占めている。

 つまり、簡裁判事のほとんどは、裁判官は裁判官だが、司法試験に受かって裁判官に任命された訳ではなく、法曹資格を持たない人々なのである。

 そして何を隠そう、仲宗根勇氏も、裁判所書記官からの抜擢組なのである。
 仲宗根氏の著書を出している未来社という出版社のホームページには、仲宗根氏のプロフィールが次のように掲示されている。

「1941年、沖縄県うるま市(旧具志川市)生まれ。東京大学法学部卒業。1965年、琉球政府公務員となる。琉球政府裁判所入所。(略)1992年、最高裁判所の簡易裁判所判事試験に沖縄県から初合格・裁判官任官。1992年~2007年、沖縄県(那覇、石垣、沖縄)、福岡県内(博多、柳川、折尾)の各裁判所に勤務。2008年~2010年、東京簡易裁判所に転勤・定年退官」

 このプロフィールからも明らかなように、仲宗根氏は司法試験の合格者ではなく、法曹資格を有していないのだが、しかし、よほど事情に通じている人でなければ、簡裁判事の登用方法など知るはずもないから、「元裁判官」という肩書きから判断して、仲宗根氏のことを司法試験の合格者で、法曹資格の持ち主だと誤解している人がたくさんいる。

 ただ単に仲宗根氏の肩書きについて人々が誤解しているだけならば、どうということもないのだが、問題なのは、元裁判官という仲宗根氏の肩書きを盲信している人々が、それだけで全てを判断し、仲宗根氏の主張の正否をちゃんと検討してみることもせずに、あたかも氏の主張が有力な法律論であるかのように崇め奉っているということである。

 しかし、いうまでもないことではあるが、ある主張が正しいか否かを決めるのは論者の肩書きではない。それを決めるのはあくまでもその内容の妥当性である。

 本当は法曹資格のない仲宗根氏のことを法律のプロだと安易に信じ込み、そのご託宣を金科玉条の如くもてはやしている人々の姿を見ていると、つくづく人間は権威に弱いものだと感じさせられる。そして、沖縄県民の通弊として伊波普猷が嘆いた事大主義がいまだに根強く残っていることに、どうにもやり切れない思いが募るばかりである。

 なお、仲宗根氏の主張には、法律論としてはまるでデタラメなものが多いが、そのデタラメぶりについては、別稿で改めて詳しく述べることにしたい。


【付記】

 仲宗根氏の経歴については、ちゃんと事実関係を調べもせずに、さらに輪を掛けて間違ったことを世間に撒き散らしている輩までいる。そして、そうした誤情報がメディアを通じて拡散され、ますます、仲宗根氏について虚像が一人歩きする結果を招いている。

 たとえば、琉球新報にコラムを連載している山口泉という輩などは、そのコラムのなかで仲宗根氏のことを何度も弁護士だと書いている。
 実際には、仲宗根氏は法曹資格を持っていないから、そもそも弁護士になれるはずがないのだが、この御仁は、仲宗根氏は法曹資格の持ち主に違いないという勝手な思い込みによって、仲宗根氏を勝手に弁護士に“任命”してしまっているのだ。全く恐れ入ったものである。

 それにしても、このようなデタラメを書き散らすことが出来る人間の神経も理解できないが、それ以上に理解できないのは、こういうデタラメをそのままノー・チェックで掲載している琉球新報編集部の無神経ぶりである。琉球新報には、まともな原稿のチェック体制がないのだろうか。

 ここで思い出しついでに書くと、先日も琉球新報は、記事のなかで、「『辺野古』県民投票の会」副代表の安里長従氏のことを税理士だと誤記していた(実際は司法書士)が、こういう基礎的な事実について平気でデタラメを書くというのは、読者の信頼に対する裏切り以外のなにものでもあるまい。
 さらに怒りついでにいわせてもらえば、こんないい加減な新聞に、エラソーに「ファクト・チェック」などと称して、他メディアの言論をあれこれとあげつらう資格はない。まずは、自分の紙面のファクト・チェックをちゃんとやるのが先ではないか。

Posted by HM at 13:02│Comments(0)仲宗根勇
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